国や文化で異なるデザインの現場−中国内モンゴル自治区

こんにちは、makotoです。

今日は前回の中国の続編として、モンゴル系民族における文字とデザインに着目していきたいと思います。モンゴル語は、主にモンゴル国と中国の内モンゴル自治区を中心とした地域に住む人々によって使用されています。

 

■ モンゴル文字とは

▼ モンゴル語が使用されている地域

 

中国人民元のお札の裏をよく見てみましょう。ZHONGGUO RENMIN YINGHANG(=中国人民銀行)とアルファベットで表記されていますが、その下にいろいろな文字表記があります。中国にはモンゴル民族をはじめ、様々な少数民族がいるため、お札にはいろいろな文字で表記がされています。

 

▼ 中国人民元

 

この中で一つ、特に異質な文字がありませんか?タツノオトシゴのような縦型文字…。これがモンゴル文字です。最大の特徴は、母音と子音を縦に繋げて表記するため、横書きが存在しない点です。(※中国の内モンゴル自治区では、この伝統的なモンゴル文字が使われていますが、モンゴル国ではソ連からの圧力により1941年以降ロシア語のキリルアルファベットが採用されています。-Wikipediaより)

 

縦書きしか出来ない場合、ウェブサイトはどうなるのか…。中国の国営通信社である新華社のHPで比較してみましょう。http://www.news.cn

 

▼ 中国語(簡体字)版

 

▼ モンゴル語版

 

縦書きに親しみのある私たちでさえ違和感を感じるこのページ構成。その理由は、モンゴル語は日本語と違い、縦書きの行を左から右へ綴るため、縦書きレイアウトにおけるNの法則が逆になっていたのです!

こちらの本の表紙をご覧ください。

 

激しいむず痒さを感じるこの表紙。しかし、モンゴル文字においてはこれが「読みやすい」ということなのでしょう。

 

■ その他の例

他にも、私たちが見慣れているレイアウトの法則が逆になっている例をご紹介します。

 

▼ 中東・北アフリカ版スターバックスHP

 

▼ アメリカ版スターバックスHP(参考までに)

 

アラビア文字は横書きを右から左へ綴るため、Zの法則が逆になっています。日本でも、戦前は横書きを右から左へ綴っていたので、こちらはまだ馴染みがあるような気がします。とすると、やはりモンゴル文字の方が難解でしょうか。。

モンゴル文字はその特殊性から電子化が遅れ、モンゴル文字で提供されるWebページが限られているため、縦書きモンゴル語を母語とする人々にとっては、Web上の情報を利用するのが困難な状況です。Windows Vista以外のOSとブラウザはモンゴル文字に対応していませんし、Windows Vistaであっても、モンゴル文字の行は上から下へ進む横書きとなっているようです。(参考:キリルモンゴル語Webページの縦書きモンゴル語への自動変換システムの開発/高紅霞、阪口哲男http://www.dl.slis.tsukuba.ac.jp/DLjournal/No_35/2-gao/2-gao.pdf)

 

モンゴル文字自体は1990年代以降、文化保存のため、ロシア語のキリルアルファベットを使用するモンゴル国内でも再び利用されつつあり、最近の動きとしては、モンゴル国大統領のHPにモンゴル文字版が加わったりしているようです。

時代の流れ、国際情勢、文化の保存、国の発展…モンゴル文字を追っていく中で、文字の背景には様々な要素が絡み合っていることが分かりました。次はどこへ旅に出ようかな。

 

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